どんなイメージ?
建築家と聞いてどんなイメージをお持ちですか?
インテリでいけ好かない感じ?、それとも偏屈で気難しい感じ?
建築家を自称する私がこんなふうに書くと、あまりに卑屈に見えるかもしれませんが、実際のところ変わった人が多いのも事実。ただ実際には、芸術家気質という人よりは、工学部出身の人が多い職業なので、どちらかと言うと理数系と言えるかもしれません。
ところで、ここで敢えて『建築家』と記載したのは、どうしてだと思いますか?別に建築士でも意味は通じるじゃないか、とお思いでしょう。ですが、建築士とした場合、必ずしも設計を行っていない人も含まれてくる可能性があるからです。
『建築士』で調べると分かりますが、『士』とは資格もしくは資格取得者を意味する場合が多いです。そして、年1回行われる資格試験において、毎年合格者の職務内容の統計データが公表されてますが、その半数以上が設計を行っていないというのが現実です。では、設計以外に何をしているかと言うと、現場監理、構造設計、設備設計、行政、積算となっています。
設計職以外の業務内容はここでは省きますが、建築家と名乗る場合、建築の設計を行っているという意味合いが強いことは覚えておくと良いかもしれません。
設計するだけじゃない
と言いつつも、建築家が常に図面を書いているかといえば、そうではないのが現実。では具体的にどういった業務を行っているのでしょうか。かなり大雑把になりますが、大別すると以下の3項目となります。
- 設計業務
- 現場監理業務
- その他の業務
上記2項目については法的にも明記されている業務内容ですが、実際にその大半を占めているのは『その他の業務』というのが現状です。
その内容を更に詳しく挙げてみると、事前の土地や周辺環境の調査、法適合性の確認、行政手続きの書類作成とその調整、見積もりの調整と交渉、建材の選定や施工性についての検証など様々。その中でも最も多くの時間を割いている業務として、建てる人(施主)と作る人(施工者)との仲介をする業務があります。
この仲介とは、業務内容を列記するほどでもない雑務がほとんど。ですが、建築の工事においては、様々な業種の多くの職人が出入りし、専門用語や製品名など普段耳慣れない言葉が飛び交います。その分野に精通していない施主はまさに異邦人と同じ。建築家はまさにそこで通訳として働き、施工者が何の工事を行っているのか、どういった工程なのかを分かりやすく伝えるという非常に重要な職務を担ってます。同時に、施主の要望を具体的にどのように形にするのか、その解決策を図面化し、施工者に伝えるという点でも通訳的な存在と言えそうです。
建築家の存在意義
少々婉曲的な表現をしましたが、建築の専門家としてのコンサルティング業務の一環と考えれば、それほど不自然とは感じないでしょう。とはいえ、建築家が設計する仕事であることの証明は、残念ながらまだ出来ていません。それでも『建築家=設計』としたい理由は、設計こそが最も熱意を持って行う作業であると思っているからです。
図面とは、あくまで施工者に何をどう作るのかを伝える手段に過ぎませんが、その線一本一本に意図があり、単なる線の集合体以上の意味を持っていると考えています。それは、施主の要望を図面化するだけではなく、要望の先にある本当に求める空間や新しいライフスタイルを提案することが建築家の本分と思っています。
設計とは、つまり提案することであり、その仕事に誇りを持っていることを理解してもらえたら本望です。
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